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しがリーマンの左遷万歳!

しがないサラリーマンのどこにでもある話

シャドーボクシング

しがないサラリーマンは少ない小遣いから会費を捻出して週に1回だけジムに通っている。
昔かじっていたボクシング。割れていた腹筋はぶよぶよの脂肪で覆われ、見る影もない。我ながら情けないが、これが今の自分だ。蒸し暑い今の時期は練習前に着替えた時点ですでに汗まみれ。日頃の不摂生を痛感する。

ストレッチで筋を伸ばしておかないと怪我が恐い。運動不足は自覚しているだけに昔の感覚でやると、グキッといってしまいそうだ。そんなことをしたら、また朝令暮改部長に怒られる。

体が温まったらリングに上がってシャドーボクシング。両手に1キロのダンベルを持って、3分間ひたすらパンチを出し続ける。次第に息が上がり、流れる汗が目に入る。肩と背中の筋肉に乳酸が溜まっていくのが分かる。
終わったら30秒休憩して、今度は何も持たずにシャドー。それを3セット繰り返す。

鏡に写る苦しそうな自分を見ていると、無性に悔しさが込み上げる。

「お前のせいで…」

左遷され、今こうやって苦しんでいるのも全て自分の弱さゆえ。やり場のない怒りが闘志を奮い立たせる。しかし、鏡の向こう側の醜い自分には絶対に勝てない。何発パンチを浴びせても倒れることは決してない。

シャドーボクシングとは本来、鏡に写る自分を見てフォームをチェックするために行う。左ジャブを打った時の右ガードの位置、右ストレートを放った時の腰から右足首までの捻転など、チェックポイントはたくさんある。若い頃は滑らかなフットワークと速いパンチを放つ自分の姿に陶酔したものだ。

今はどうだ。ぶよぶよに太った汗まみれの中年男がゼエゼエと息を切らせている。いつの間に俺はこんな情けない男になったんだ!