しがリーマンの左遷万歳!

しがないサラリーマンのどこにでもある話

偶然の"再会"

その瞬間はあまりにも唐突だった。地元の夏祭りを雰囲気だけでも味わおうとフラッと訪れたのも何かの巡り合わせだったのか。

神社の賽銭箱に五円玉を投げ入れ、二礼二拍一礼して家族の健康と自分の仕事についてお願いした後、露店が並ぶ道路をブラブラと歩いていた時だ。

金魚すくいをしている、よその子供たちを何気なく見ていたら、その前をまーこが通過した。間違いない。まーこだ。

声をかけることなくいったん通り過ぎてから振り返ると、見知らぬ男と手を繋いで歩いていた。俺と会う時はかぶったことのない麦わら帽子に、水色のワンピースという清純な少女のようなファッション。明らかに独りの女としてデートを楽しむ後ろ姿だった。

幸い、私には気付いていない。そのまま見て見ぬ振りをしようかとも思ったが、私は後ろを付けることにした。20メートルくらい距離を保ちながら、まーこが手を繋ぐノッポの男の背中に視線を注ぐと、無性に悔しさが込み上げてきた。

私には見せたことのない女らしい出立ち。そもそも手を繋いで歩いたことなどなかった気がする。私とは会えばセックスか変態プレーを楽しむだけだったが、真面目そうな印象の男は、一体何者だろうか。あんな野郎に絶妙の口戯で奉仕しているのだろうか。私の身体中に嫉妬心と邪悪な好奇心が充満し、とことん付けてやろうと思った。

ひと駅分くらい歩いただろうか。前を歩く2人が信号待ちしたので、私もその場でスマホをいじる振りをしながら立ち止まった。

少し目を離していたらいつの間にか信号は青になり、2人がいない。私は少し急ぎ足で追いかけ、信号の角を曲がると、2人がこっちを向いて歩いてきた。

その距離、わずか5メートル。私は思わず下を向く。横目に感じるまーこもうつむきながら私から遠ざかるように斜行しているようだった。探偵よろしく、気付かれずに尾行しているつもりが、呆気なくバレてしまった。

さすがにそれ以上付ける気にはなれず、私は元いた場所に戻った。なぜかスッキリしたような、晴れ晴れした気分だった。

かつてはあれほど激しく愛し合ったまーこ。俺は全てをさらけ出し、その全てを受け入れてくれたまーこ。一瞬のうちに様々な思い出が甦り、衝動的にポケットからスマホを取り出した私はまーこにメールを送った。

「幸せになってね。俺は2番手でもいいよ」

やはり未練は断ち切れない。もう一度愛し合いたい。もう一度甘えたい。