しがリーマンの左遷万歳!

しがないサラリーマンのどこにでもある話

試飲

今日は出張先でたまたま夏祭りをやっていたのでブラブラと歩きました。田舎町の割には規模が大きく、大勢の人たちで賑わっていました。いつも通り、汗だくになって歩いていると、冷えたスイカを無料で配っていたので思わず食いついてしまいました。大人げなく2切れもパクついたことを、ここに白状します。

ビールを飲むと脱水症状を起こしそうだったので我慢し、何か面白いものはないかと探していると、「酒蔵無料見学」という看板が目に飛び込んできました。これは夏祭りとは関係なく普段からやっている様子でしたが、好奇心をそそられ、中に入りました。

古い建物に一歩入ると、外の喧騒とは別世界のような静けさです。薄暗くて他に客はおらず、少し不気味な雰囲気すら漂っていました。奥から突然、お爺さんが姿を現したかと思うと、「酒蔵は奥にあるから見てきたらええ。後で試飲もできる」と有難いお言葉を頂戴しました。

創業何十年なのか、何百年なのか分かりませんが、台風が直撃したら吹き飛びそうな、古くて薄暗い建物を奥に進むと、やがて大きな複数のタンクが見つかりました。以前にテレビで紹介されたことがあるらしく、若かりし頃の小池栄子や志垣太郎に混じって、山田まりやや羽賀研二の写真が貼ってありました。よりによって、今はテレビでめっきり見なくなった2人の写真に何か因縁めいたものを感じました。

ただ、タンクを見ても「この中で酒を造っているのか」と想像するだけで、特に感慨深い訳でもないので、お爺さんのところに戻りました。私の頭の中は「試飲」でいっぱいです。

お爺さんは話好きで、暇だったのもあったのでしょうが、私が何も聞かなくてもいろいろなことを説明してくれました。昔はたくさんあった酒蔵も次々に閉まり、寂しい思いをしているようです。私は相槌を打ちながら、山田まりやと羽賀研二の顔を思い浮かべました。

その後も愛想笑いを浮かべながら"その時"を待ちましたが、お爺さんは自分の話に夢中で一向に前に進みません。私はついにしびれを切らし、「試飲してもいいですか?」と自ら切り出しました。お爺さんは「あぁ、気に入ったら買ってくれたらええ」とちゃっかり宣伝するあたりは、さすが商売人です。私は全く買う気はありませんでしたが、2種類の日本酒をお猪口に注ぎ、美味しくいただきました。

その後もお爺さんの話は止まりません。昔の同窓会名簿を取り出して何やら説明してくれましたが、私は目的を果たしたのと、電車の時刻が気になって仕方なかったのとで、お爺さんの言葉はあまり頭に入ってきませんでした。お爺さんは間断なく話すので、切り上げるタイミングが難しかったのですが、最後は心を鬼にして「また来ます。ありがとう」とお爺さんの言葉を遮って、その場を離れました。

中越しにお爺さんの声が聞こえたような気がしましたが、夏祭りの喧騒でかき消されました。お爺さん、ごちそうさま!

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